犬をつれて散歩していると、信号待ちをする車のカップルが僕の方を熱心に見つめていた。
まあ、この辺にはそういない美青年だから、こういうのも仕方ないことかしらん、罪だね、ふふん、って、思ったが、どうやら僕を見ているわけではなさそうだった。
犬を見ているのだ。
我が家の犬は柴犬なのだが、特に奇抜な風体をしているわけではない。いたってノーマルな柴犬だ。なのに、そんなに視線を集めてしまうのはなぜ? 今、柴犬がアツいの? っていくつか疑問符がわいたが、これはまあ、過ぎ去ったとも言われるペットブームの惰性現象かな。
でも、考えてみれば、前にペットショップに行ったとき、柴犬ってわりと人気を集めていたような気がする。もしかすると、ペットショップ外でもそこそこ人気があるのかな。
かつてペット業界にいた関係上、女の子と話す際は自然とペットの話題になったりもして、どんな犬が好きなの? っていう感じで、決まって訊いていた。男とはペットの話なんてする事がまずないので、そういう質問をする対象は、ほんと、ほとんどが女の人。その話題のなかで人気があったのは、コーギーとヨークシャテリア。柴犬なんて、名前が挙がったためしがない。
しかし、地道に人気を集めていたんだな、柴犬。いや、別にカップルの二人が見てたからと言って、人気があるとも限らぬか。まだまだ精進だな、柴犬。