読了

書評集なのだけど、書評って読んでどうとらえて良いものなのか、少しとまどう。
でも、その良し悪しのような違いはわかる。新聞や雑誌に掲載されている書評には、やっつけ仕事のような味気ない書評が散見する。取り上げた本にまともに向き合っていないような不誠実さを感じる。
この本に収められている書評は実に質の高いものだと思った。手抜きなしで仕上がっている。堀江敏幸はよほど本が好きなんだな。そして本に正面から対峙し逃げていない。
堀江敏幸は仏文学者でもある。学問として文学をとらえる専門家は往々にして退屈な文章を書く。しかし彼は一線を画す。高橋源一郎のように本を楽しみ尽くして語る姿勢がある。その絶妙なポジションが良い味になる。
タイトルの「本の音」、表記を変えてみると、「本ノオト」となる。本についてのノートだ。また、「の」を取ると「本音」となる。本が奏でる音を聴き取り、本音をくみ取ろうとする試みに、見事にマッチするタイトルだと思った。
ただ、書評って続けて読み進めると、ひどく疲れるね。