川上弘美の『センセイの鞄』を引用しながら語るあれこれ。

笑いに、妙なものが混じっている。以前小さな蛙をまちがってのみこんでしまった人がそれ以来腹の底からは決して笑えなくなってしまったような、そんなような妙につっかかった様子の笑いだった。(p107)

この文章はやり過ぎですよ。この比喩だけ妙に浮いていたように思う。
でも面白いからいいけど。そして、これは川上弘美らしいといえる文章なのかな。まだあまり読んでないのでなんとも言えない。

失敗した。大人は、人を困惑させる言葉を口にしてはいけない。次の朝に笑ってあいさつしあえなくなるような言葉を、平気で口に出してはいけない。(p172)

ある言葉を口にすることで、それまでの関係が崩れることが往々にしてある。それはマイナス方向の言葉に限らない。
気持ちを伝える言葉などであったら、口にしなければ始まらないというのもわかる。しかし、気持ちを伝えて、”笑ってあいさつしあえなくなる”状態になる可能性は確実にある。今なら言っても大丈夫だという手がかりがつかめないから苦労するんだ。
永遠の問題だよね。

大事な恋愛ならば、植木と同様、追肥やら雪吊りやらをして、手をつくすことが肝腎。そうでない恋愛ならば、適当に手を抜いて立ち枯れさせることが安心。(p230)

大事な恋愛、そうでない恋愛、そんなこと言えるほど恋愛できてませんからっ! 残念! (波田陽区風に)。
ああ、こんな格言的な言葉を言えるようになってみたいです。
それにしても、”安心”という言葉を選ぶなんてセンスがある。