距離が開き始めていた僕とモンちゃんの関係が再び縮まるときがあった。それは沙織という女性の登場によってもたらされた。
沙織はモンちゃんと同じ大学に通っていた。僕らより1つ年上だった。化粧をほとんどしない美しい人だった。鼻筋は通り切れ長の目は涼しげだった。長い黒髪をしていたのだが、髪を束ねるとうなじにあるほくろが目に付いた記憶がある。夏にはワンピース、冬にはシャツにチョッキを着てロングスカートという、なんだかお嬢様というようなイメージが僕にはあった。
その沙織の出現によって、僕とモンちゃんの距離は縮まり、そして大きく離れることになった。
この話は、日本中がサッカーワールドカップフランス大会で盛り上がっていた1998年の夏に始まり、ノストラダムスの言葉がにわかに話題にのぼり始めた1999年の年明けに終わる。